2026年7月15日・16日の2日間にわたって開催された、弊社主催の展示会「Printing Voyage 2026」。会場では、業界紙・プリント企業・販売店という異なる立場の4名が登壇し、プリントビジネスの未来について語る座談会を実施しました。
当日は多くの来場者が集まり、展示会のなかでも特に注目を集めた企画となりました。
本記事では座談会の後編として、AI・自動化の活用や、これからのプリント事業者が取り組むべきことについて、当日の議論や登壇者の言葉をお届けします。
プリント業界では今、DTFやUV印刷といった新しい技術をはじめ、AI・自動化、デジタル化、小ロット・短納期対応など、さまざまな変化が起きています。
後編では、AI・自動化の活用や、これからのプリント事業者が取り組むべきことについて、現場感のある意見を伺いました。今後の事業展開を考えるヒントとして、ぜひご覧ください。
登壇者紹介
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デジタルとプリントを掛け合わせた新しいプリントビジネスを展開。
オンデマンド・パーソナライズなどの新しい手法を実践。 
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オーダーグッズビジネス専門紙「OGBSマガジン」などを通じ、長年にわたり業界全体の動向を発信。

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岡山県倉敷市で長年ウェアプリント加工を手がける企業で、シルクスクリーンプリントを中心にインクジェット、DTF転写、裁断、縫製、仕上げ、出荷まで幅広く対応。

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特殊プリンター・加工機材関連資材を扱う専門商社。
DTF、UV、溶剤、レーザー、ガーメント、カッティングなど幅広いシステムを取り扱い、機械・材料サポートを含めた提案を行う。 
テーマ3:AI・自動化はプリントビジネスをどう変えるのか
―AIや自動化、デジタル化が急速に進んでいます。プリント業界では、これらの技術をどのように活用できるのでしょうか。
また、人の仕事や企業の強みは今後どのように変わると考えていますか。
AIが最初に変えるのは印刷工程ではなく、日々の「見えない業務」
前川(ユーロポート):
販売店に限った話ではないですが、AI・自動化が一番効いてくるのは「お客様から見えない業務」だと思います。
受注や発注、在庫管理、見積もりなど、ものづくりの裏側にある作業です。
ここをシステム化することで、それぞれの加工や工程にどれだけコストがかかっているのかを、数字で正確に把握できるようになります。
AIやシステムは、人の仕事を奪うためではなく、「人に時間をつくる」ために導入するものだと考えています。
人にしかできない仕事は、これからさらに高度になっていくはずです。
そこに人を育て、時間を使えるようにするために、AIや自動化を活用することが重要です。
現場を理解したうえで、機械に任せる仕事と人が担う仕事を分ける
森(モリ・フロッキー):
私自身はAIに強い関心があり、試しながら仕事にどう落とし込めるか模索しています。
工場目線で見ると、Tシャツプリントの最先端を走っているのはオンデマンドで物流と一体化している企業です。
ただ、そこに到達するには相当な資本、場所、仕事量が必要で、簡単に真似できるものではありません。
現場で今取り組めるのは、自社に合った機械を一つずつ導入し、「小さな自動化」を進めることだと考えています。
例えば、Tシャツをたたむ作業。現在はタイミー(スポットワーカー)に手作業でお願いしていますが、自動たたみ機を導入すれば1時間当たりの処理量が大きく増える。
導入費用と効果を比べながら、現場に合う方法を検討しています。
一方で、品質まで機械任せにはできません。
DTFなどのデジタルプリントも、データを入れて印刷し、プレスすれば終わりではなく、バンディングの有無やフィルムの焼け具合など、人の目で確認すべき工程がまだ多くあります。
すべてを自動化するのではなく、機械に任せる部分と、人が品質を担保する部分を見極めることが大切だと思います。

自動化の第一歩は、AI導入ではなく「正確なデータを残すこと」
近藤(グーフ):
データの仕組み化やAIは「誰でもできること」をどんどん代替してしまうので、価格競争も進んでいくと思います。
だからこそ、本来人間がやるべき仕事は何か、会社としてどこに注力するかを明確にすることが重要です。
AIを導入するにしても、「自社は何のために使うのか」を考えることが欠かせません。
前川さんもおっしゃっていた「お客様から見えない部分の自動化」は非常に大事だと思います。
加えて、その前提として大切なのが、正確なデータを残すことです。
大がかりなシステムの導入を想像しがちですが、最初はアナログでも構いません。
森さんの「たたみ作業に何分かかるか」といった話のように、アナログでもいいのでまず記録として残すことが第一歩です。
データさえあれば、後からAIなどで分析して問題箇所を見つけられます。難しく考えず、小さなことからの積み重ねが重要だと思います。
生成AIは新たな需要を生み、小さな自動化が現場を支える
真子(ゲンダイ出版):
生成AIの普及によって、まず需要そのものが増えると思います。
これまでイラストが描けなかった人でも、ChatGPTやCanvaで簡単に絵を作り、それをTシャツやアクリルキーホルダーとして形にしたいというニーズが今後どんどん増えていくはずです。
一方、プリント事業者側では、これまで人がやっていた作業を機械やソフトウェアに置き換えていく「オートメーション化」が進むと思います。ただし最初から大掛かりに取り組む必要はありません。
ベルトコンベアを一つ導入する、自動たたみ機を取り入れるといった小さな一歩の積み重ねが、結果としてデジタル化や自動化につながります。
特に地方では、人手不足や人件費の上昇が深刻です。奈良に行けば人より鹿の方が多いくらいで(笑)。
そういう地域では、これまで人が担ってきた作業の一部を機械に置き換えなければ、事業を維持できないケースも出てきます。
AIや自動化を、自社には関係のない話だと思わないでほしいですね。

テーマ4:プリント事業者が取り組むべきこれからの一手
―変化のなかで選ばれ続けるために、今取り組むべきこと
―技術や市場が変化するなかで、プリント事業者が今後も顧客から選ばれ続けるためには、何に取り組むべきでしょうか。
新しい設備を導入する前に考えるべきことも含めて、それぞれの立場からアドバイスをお願いします。

新しい技術を導入する前に、消費者が本当に欲しいものを考える
真子(ゲンダイ出版):
最後なので、少し問題提起をさせてください。
市場が伸びているといっても、我々の商売は結局「需要」があって成り立っているものです。
新しい製法を導入し、自動化を進めても、それが最終的にエンドユーザーの「欲しい」という欲求を満たしていなければ意味がありません。
かつては「1枚だけ欲しい」「学校の遠足用に1枚だけ」といった注文には応えられませんでした。
そのニーズを、プリントオンデマンドやDTGなどの進化が満たしてきたわけです。
ところが布用DTFは、業者側の「安く早く、人手をかけずに作りたい」という欲求は満たしていても、着心地や耐久性を含め、エンドユーザーのニーズをどのように満たすのかは、今後さらに考える必要があります。
これはDTFがダメだという話ではなく、その技術によって誰のどんな要望を満たすのかを、改めて考えるべきだということです。
そもそもプリント商品は、本来「なくても困らないもの」です。
無地のTシャツでも着られますし、スマートフォンも今はケースなしで使う人が多い。
かつてUVフラットベッドでオリジナルスマホケースが流行りましたが、以前ほど見かけなくなりました。消費者が「なくてもいい」と気づいた瞬間に、需要はなくなります。
だからこそ、消費者が今何を求めているのかを見極め、そこに設備・人材・価格・提供方法をどう合わせるかを、業界全体で考えていくべき段階に来ていると感じます。
設備やAIを活用し、人を育てる時間をつくる
森(モリ・フロッキー):
私自身、機材投資が好きで、利益の大半を新しい設備に投じるタイプです。
扱いやすいプリント機材を導入し、タイミーやアルバイトの方にも簡単にプリント作業を担ってもらえるようになりました。
一方で、今課題になっているのは仕事を教える側の負担です。
現代は転職に対する考え方も変化し、人の入れ替わりも多くなっています。
人の入れ替わりのたびに教える必要があり、コーチ役となる社員が疲弊してしまいます。
例えば、当社では1日に約200枚の指示書を各工程へ振り分け、加工結果をスプレッドシートに入力しています。
入力作業だけで1日2時間ほどかかる場合もあるため、こうした業務をChatGPTなどで整理できないか模索しています。
それによってコーチ役の負担を減らし、新しく入った社員との関係構築や育成に時間を割けるようにできればと考えています。
以前は職人の育成に長い時間がかかったシルクスクリーンのようなスキルも、今はデジタルの力で入社1カ月ほどで十分プリントできるようになる時代になりました。
機材選びの工夫でその点は乗り越えられていると感じています。

「なぜ自社が選ばれるのか」を明確にし、人材と企業文化を育てる
近藤(グーフ):
需要を捉えていくことと同時に「自社がなぜお客様に選ばれているのか」を明確にすることが非常に重要だと考えています。
設備投資はお金を出せばできますが、それをどう活かすかの判断をするのは結局「人」です。
自分たちが何を大切にし、そのためにどんな人材が必要かを考えていく必要があります。設備は用意できても、人材や企業文化はすぐには作れません。
弊社は「プリントを大切にするサービス会社」として創業しましたが、気づけばIT・サービス人材ばかりが集まり、プリントを分かる人材が減ってしまうという課題に直面しました。
そこで一昨年、自社で生産設備環境を立ち上げ、実際にものづくりを始めました。
自分たちで印刷の現場を経験したことで、サービスを提供するうえで何を大切にすべきかを、改めて学ぶことができました。
自社が何のために存在し、どんな価値を提供するのかを明確にする。
そのうえで、必要な人材や仕組みを整えていくこと。当たり前のようですが、これが非常に重要だと思います。
変化をチャンスに変え、新しい価値を生み出す
前川(ユーロポート):
真子さんの問題提起は、プリント業界に限った話ではなく、モノに付加価値をつけてビジネスをしている業界全体に通じる話だと感じました。
飲み物だって、突き詰めれば水でも生きていける。その中でどう評価され、選んでもらうかを考える必要があります。
そういう意味で、プリントは付加価値をつけるうえで非常に良い手段だと思っています。
単なるTシャツではなく、好きなロゴを載せたり、ギフトとして贈ったりすることで、メッセージや思い、体験が加わります。
デジタル化やAIがどれだけ進んでも、「何かを作りたい」「手で触れたい」という欲求はなくならないと思います。
私たちは、その人が思い描いたアイデアやデザインを、実際に手に取れるものへ変える機会を提供しています。
だからこそ、その価値をしっかり伝えていくことが重要だと思います。
かつてユニクロが店頭でプリント可能な製品を出した際、そのインパクトは非常に大きく、「こんな商品を作れる」「こんなものにもプリントできる」という認知が広がり需要が大きく拡大しました。
知ってもらうことで新たな需要が生まれます。作りたいと思う人が増えれば、作る側の仕事も増えていきます。
変化は脅威にも見えますが、これまでのやり方を手放すチャンスでもあります。
AIが登場したことで、その変化のスピードは急速に上がっています。
今年は「大きく物事が変わった年」として後に振り返られるのではないかと思っています。
皆さんにも、AIを積極的に活用していただければと思います。
前編はこちら
前編では、プリント業界の現在地や、これから成長が期待される分野について、4名それぞれの視点から語っていただきました。
後編とあわせて、ぜひご覧ください。
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Printing Voyage 2026
Printing Voyage(プリンティングボヤージュ)は、2026年7月15日・16日に開催されたデジタルプリントの展示会です。












